※「MC」2024年10月10日発行(第1245号)『モノトーン』リリース時の特集記事を再掲載しています。
──新曲『モノトーン』は映画『ふれる。』の世界をどのように表現していったのでしょうか。
Ayase「今回は物語全体におけるテーマを汲み取った上で、自分自身とも重ね合わせながら作ろうと思いました。
僕自身の人生、生活を見つめ直して、しんどかったことにも向き合いながら書いていく形というのは、YOASOBIとしては珍しい流れでしたね」
──ikuraさんが実際に歌ってみて感じたことは?
ikura「『モノトーン』はYOASOBIの曲の中ではバラード寄りの楽曲なのですが、メロディーにも細かくニュアンスが付いていたりするので、それが忙しなく聴こえないように、スッと入ってくる曲にしたいなというのは、曲を覚える段階で考えていました。
曲のメロディーを聴いたときに、息の表現であったり、自分自身の声の成分の特に良い部分だったりっていうのをエッセンスとして入れていきたい。
楽曲全体の中で強さと柔らかさの強弱をつけて、声色の細かいニュアンスも意識しながらレコーディングしました」
──実際に映画『ふれる。』を観て、いかがでしたか?
Ayase「ざっくりの内容や台本を最初に見させてもらった上で完成した映画を観たので、作品に登場する不思議な生き物「ふれる」の動きが思っていた感じと違っていたのでびっくりしました。
ぴょんぴょん動くのかと思っていたら、こうサササ~って。こんなスピード感のある子なんだ!? と(笑)」
ikura「「ふれる」がもう本当に可愛すぎて、観ている間中ずっと悶えていたんです。
後半、「ふれる」の目が輝くところがあるんですが、そこでさらに胸がギュッと掴まれました。
いろんな葛藤が描かれた物語の終わりに『モノトーン』が流れて、そこにはAyaseさん自身の体験が反映された歌詞に私の共感を乗せた歌った曲が流れたときに、この作品に携われて本当に良かったなと思いました」
──歌詞で描写されている「孤独」について、感じ方は人それぞれだと思いますが、おふたりの場合はいかがですか?
Ayase「僕が孤独を感じるのは、制作しているときですかね。
ひとりで作っているからという物理的なことではなく、社会に向けて楽曲を発表しているので、必然的に自分と大勢の人たちという対比で距離を感じるんです。
聴いた人がどう思うだろうか、といったことを考えているときにです。
曲ができて発表して、沢山の人に聴いてもらっているということを知ったときもかな。
認められた喜びもありつつ、産み落としたら楽曲はひとり歩きしていきますから。
その曲が人々に取り囲まれているのを遠巻きに、別の曲を作りながら眺めているっていうイメージの孤独感です」
ikura「YOASOBIがライブパフォーマンスをやり始めてから、ボーカリストとしてステージに立っているときには自分だけの、自分の中での戦いがあるんです。
そこから生まれる孤独感は、きっとこれからも消えることはないだろうな、と。
でもそれは必要なことなんです。YOASOBIのチーム、バンドメンバーも側にいてくれるけれど、ボーカルとして一番前に立つのは自分なので。必然的に孤独にはなるけれど、そこで強くなれていけてることも、ここ3年くらいで実感できているんです。
孤独という感情と向き合うことも大事なんだなと思っています」
Ayase「孤独って、そもそも完全には切り離せないものなんですよね。
本を読んだり、まわりの人と議論したりした結果、自分のなかで出た答えなんですが、孤独の種類というものを分別しないといけないし、“鮮やかな孤独”でなければいけないんです。
単一な、モノトーンな孤独にとらわれたら苦しみしかないけど、見る角度によって色が変わるような、そういう孤独を向き合うようにすれば、人生はより鮮やかになる。
さみしい、ひとりが嫌だとか、まわりはみんな敵だ、みたいな孤独ではなく、社会と適切な距離を保つための孤独はむしろ、ないと息苦しくなってしまう。
要するに、大人になるってそういうことだよねと」
──映画でも成長が描かれていますが、大人になったなと感じるのはどんなときですか?
Ayase「やっぱり、社会と自分ということを考えられるようになったことですかね。
昔は「僕とあなた」で止まっていたけれど、プラスそれを見ている人たちがいて、自分はどういう立ち回りをするのがいいのかを考えるようになった。
そこはYOASOBIの活動は大きく関係していると思います」
ikura「自分の存在意義と孤独というのは深く結びついていると思うんですが、どうしても、社会の中での自分の存在意義を図ろうとしてしまうんですよね。
だけど、社会で何か大きなことをしていなくても、自分が過ごしてきた時間を肯定できる、今の自分のいるところ、役割をしっかり心から愛せると自覚できたら、大人になれたって感じはします」
──プライベートでの近況も教えてください。
Ayase「ついに自分のスタジオを構えまして。
その条件として、ベランダでバーベキューができる物件を探し回った結果、念願叶って日々バーベキューばかりやっています(笑)。
バーベキューって結構ハードルが高いじゃないですか。予定を合わせて集まって、買い出しをして。
もっと気軽にやれたらというのが僕の中での大きな夢になっていたんです。今は普通に晩飯を食べるテンションで、「今日は天気いいし、涼しくなったし、肉焼くか!」ってやってます(笑)」
ikura「数ヶ月前にコンパクトデジタルカメラを買って、自分の行った場所や楽しい瞬間の写真を撮って、インスタにあげたりしています。すごく楽しいです」
──最後にドーム公演への意気込みをお願いします!
Ayase「これまで以上にテーマと演出について深く話し合ったり、力を貸してくれるクリエイティブの人を自分で探したりしながら、今ようやく形になってきました。5周年という記念の年に僕らの精神性みたいなところも投影したライブにしたいので、非常にメモリアルなライブになると思います」
ikura「この5年間のひとつの集大成として、これからに向けてワクワクしてもらえるようなライブになると思うので、楽しみにしていてください!」